難なく MCPC IoTシステム技術検定試験(中級) に合格したい

2017年12月1日(土) 実施の 第3回「MCPC IoTシステム技術検定試験 中級検定」を受験 してきました。まだ試験実施回数が浅いこともあってか、インターネット上にほとんど情報がなかったため、今後受験される方の参考になるように、自分の体験談を残しておきます。

IoTシステム技術検定試験とは?

モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が実施する検定で、基礎・中級・上級の3段階レベルの試験があります。自分が受験した2017年12月(第3回)時点では、基礎が今回初めての実施・上級は未実施で、中級がメインの試験となっていました。

試験の詳細や最新情報はMCPCの公式サイトをご覧ください。
http://www.mcpc-jp.org/iotkentei/

IoT分野では、IoT検定制度委員会(iotcert)が実施する「IoT検定」という名称の別試験もあるようですが、特にMCPC会員企業の従業員は、会社の勧めでMCPCの検定を受験される方が多いのではないでしょうか。

MCPC会員企業:通信キャリア、コンピュータハードウェアメーカ・ソフトウェア メーカ、システムインテグレータ等。幹事会社は、NTTドコモKDDI・シャープ・ソフトバンク東芝NEC・日立・富士通 (2017年12月時点。MCPCサイト記載順)。

今回の受験会場では、会員企業の社員は入室時の社員証チェックがありましたが(優待価格で受験できるため)、感覚的には半数程度の方が社員証を提示していました。

試験対策

MCPCは「IoTシステム技術検定試験」の他にも、モバイル技術システム検定などを開催していますが、共通して

  1. 公式テキストが発行されているが、過去問の問題集が存在しない
  2. 合格点や合格率が公式発表されないため、試験の難易度や基準を事前に掴みにくい

という特徴があるようです。

試験問題の難易度

公式サイトの問題サンプルのみが拠り所になります。自分も受験に先立ってMCPCサイトで例題を確認しましたが、問題は選択肢方式で難易度もそれほど高くない印象を受けました。
http://www.mcpc-jp.org/iotkentei/text.html

当初は「基礎検定に合格してから、中級検定を受験」といったステップも検討しましたが、試験の頻度が1年に2回のため時間がかかりすぎる点と、個人的な印象では、サンプル問題を見る限り、基礎検定と中級検定のレベルの開きはそこまで感じなかった点を踏まえ、いきなり中級検定を受けてみることにしました。

実際に今回のテストを終えてみても、その見立ては特にズレていなかったように思いますので、IoTやモバイルのことを殆ど知らないのでなければ、初っ端から中級検定を受験しても問題ないと思います。

特に会員企業の従業員の方で、会社から受験を勧められている方であれば、ある程度の基礎となるリテラシはお持ちだと思いますし、実務でIoTに携わるためには必要で役に立つ内容ですので、躊躇せずに中級検定を受けるのが良いでしょう。

なお、本業でIoTバリバリやられている方には、寧ろ簡単すぎて恐らくほぼノー勉でも楽勝なレベルのため、そういった方は、今後開催されるであろう上級検定がターゲットになりそうです。

合格基準(の妄想)

正当な根拠がない全くの参考情報にはなりますが、MCPCの他試験について検索する限りでは(ブログや2ch等)、体感として7~8割くらいを自信をもって回答できていると合格になっている方が多いようです。逆に、半分くらいしかわからないといった方は不合格になっています。

記述式ではなく、マークシートの4択問題のため、正答が絞りきれずに回答した場合も、あくまで確率的には 1/4 は正解になります。ほぼ数字あそびですが、自信度別の正答率が、

自信度 内容 正答率
自信をもって回答 90%(人間だからミスもある前提で)
2つの選択肢で迷って回答 50%(半分)
全くわからず適当に回答 25%(4分の1)

だとして、「7~8割くらいを自信をもって回答」「半分くらいしかわからない」の両パターンで見込み点数を見積もると、

7~8割くらいを自信をもって回答

得点見込み:100点満点のうち、75点くらい (63+10+2.5)

自信度 設問の割合 得点見込み
70% 70 * 0.9 = 63点
20% 20 * 0.5 = 10点
10% 10 * 0.25 = 2.5点
「半分くらいしかわからない」

得点見込み:100点満点のうち、60点弱 (36+15+7.5)

自信度 設問の割合 得点見込み
40% 40 * 0.9 = 36点
30% 30 * 0.5 = 15点
30% 30 * 0.25 = 7.5点

となり、超ざっくりでは8割超であれば合格で、逆に6割レベルだと不合格可能性が高い、といった感じでしょうか。妄想に近い、クソみたいなシミュレーションですが、他の各種試験の基準に照らしてみても、そこまで違和感はなさそうです。

合格に向けた勉強方法

「必要勉強時間は何時間?」とストレートに気になる方がいると思います。答えだけを先に書くと、自分のケースでは「試験2週間前にお尻に火がつき、15時間程度で公式テキストを5周マラソン」でした。

※自分はインターネット企業におり(技術職ではない)、モバイル・IoTにある程度の興味があったため、テキストを読むこと自体には特に忌避感はなかったのと、文章を読むのもある程度早いと自分では認識しています(他人との比較はなかなか難しいですが)

以下に体験談の詳細を記述していきますが、公式テキスト・参考書は以下の1冊しかありませんので、きちんと受験の準備をしたい場合には、こちらの購入がマストです。

[Amazon] IoT技術テキスト -MCPC IoTシステム技術検定 対応-

もちろんAmazonで買えますし、大型書店であれば大抵の店舗に在庫があると思います(新宿にはありました)。

公式テキストの購入

さて、多くの方が迷うと思うのが、紙ベースの書籍版を購入するか、デジタルデータのKindle版を買うかだと思います。あらためて整理するまでもありませんが、

書籍版(ソフトカバー)
  • 一般的なソフトカバーの書籍での勉強に馴染んでいる人には違和感なし(全体進捗がひと目でわかりやすい、書き込みができる、本棚に並べたい)
  • かさばるため持ち運びに不便。特に本書はサイズも大きく(一般的な雑誌サイズ)、ページ数も320ページと分厚いので、通勤途中に電車で読むのは困難
Kindle
  • 即時ダウンロードできるため、受験に対するモチベーションが高いタイミングで購入して、気持ちが冷める前にクイックに勉強に着手できる
  • 特に本書は、固定レイアウトで作成されているため、
    • 小さなディスプレイでは見にくい(ズームして読む必要がある)
    • 文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が利用不可

といったメリット・デメリットがあり、個人の好みや考え方で選択をお勧めします。
自分自身の場合には、多少コストの無駄だと思いつつ、結果としてそれを許容して両方を購入しました。

試験対策のスケジュール

自分の実績を実際に振り返ってみると、

書籍版(試験 3ヶ月前〜)
  • 試験の3ヶ月ほど前に、書籍版を購入
  • 買った当初、夕食後に自宅でお酒を飲みながら、ネットTVでバラエティ番組を流しつつ、超ナナメ読み(内容は殆ど頭に入ってこず、「ふーんこんな事書いてあるんだ」レベル)
  • ざっと1回だけ最後まで流し終わったら、そのまま全くやる気がでずに暫く放置
  • 試験2週間ほど前になって、そろそろヤバいと思い、通勤を利用してテキストへの接触時間を増やそうと思うが、持ち運びに不便すぎてKindle版の購入を決心
Kindle版(試験 2週間前〜)
  • 前述の固定レイアウトのため可読性に多少の難があるものの、通勤時間は電車のなかでずっとスマホをいじっているスマホ厨のため、そこまで違和感なくスマホのKidleアプリでとにかく周回
  • 実際の試験問題の難易度を踏まえると、些末な内容まで抑えるよりも、中核的なポイントを抑えるのが重要と考えていたため、100%読みこなすよりも、読み込みの回数を増やすことを意識
  • 試験2週間前は、5往復の通勤(10時間弱)で一通りを読み通す
  • 試験1週間前は、通勤3片道分(往路+復路+翌日の往路、だいたい2時間弱の乗車時間)で1周するペースで、3回読み直し
  • 試験当日も、行き電車のなか+会場でちょっとだけKindleアプリを見直し。時間もないため、「このページの内容は読んだことあるな」程度の確認を行い、「え?こんなページあったっけ?」レベルの章がないことを確認

といった感じで進めてきました。自分の場合には、机に座って読むよりもひたすらKindleアプリで何周もしたのが試験対策です。

スタンス

理解度をどこまで深めるべきか、という点ですが、実際の試験は記述式ではなく選択式のため、完全に暗記・理解をしていなくても、記憶が曖昧なものも選択肢から答えを思い出したり、消去法で答えを絞り込むことが可能です。

これを踏まえて、狭い範囲を深く対策をするよりも、深掘りせずとも広く記載内容をカバーして、消去法などで正答率をあげることが重要だと思います。

これは個人的な考えですが、現代のインターネット時代に、細かい内容を丸暗記することは非効率的だと考えています。重箱の隅をつつくような名称や数値なんかは、自分で覚えていなくてもググれば良いので。

些末な内容の丸暗記よりも、検索するための下支えとなる基礎知識を広く浅く押さえることが重要だとすれば、その考え方とも、上記の試験対策(浅くても広範をカバー)は考え方がマッチすると思います。

今振り返ってみると、自分の場合には Kindle版のダウンロードだけでも良かったのかもしれませんが、ひょっとすると書籍版で(酔いつつも)流し読みしたことが、Kindle版で何周もマラソンする際の下地になっていたかもしれません。

いずれにせよ、試験2週間前に焦りはじめても通勤電車の往復でリカバリできたと思いますので、テスト直前になって慌てて試験情報を検索し当記事にたどり着いた方も、諦めずに取り組んでいただくことをお勧めします。

受験当日の様子

全国実施のテストとなっており、地域ごとに会場が異なりますが、自分の場合には東京都受験を指定し、実際の会場は東京大学本郷キャンパスでした。

土曜日開催で「9:00 受付開始、9:30 事前説明、9:50〜11:20 試験」となっており、前日金曜はちょっぴり早めの忘年会で、休日早めに起きるのがしんどかったです。

自分の想定よりも多くの方が受験されており、50~100人規模の教室が何部屋もありました。学生っぽい受験者もいましたが、やはり企業勤めのサラリーマンも多く、30代〜40代くらいがメイン(あくまで印象)。女性は全体の1~2割くらいですかね。

試験は全80問の選択式(4択)マークシートで、問題用紙は持ち帰り不可、途中退出不可。変わっているなと思ったのが、マークシートの様式で、丸の中を塗りつぶす必要はなく(塗りつぶしても良い)、枠の部分をきちんとなぞればOKというスタイルでした。

問題形式は、公式サイトのサンプルを見ればわかりますが、

  • 文章記述の空欄に入れるべき語句(の組み合わせ)を選ぶ
  • 文章記述のうち、適切なもの・不適切なもの(の組み合わせ)を選ぶ
  • 計算結果として正しいものを選ぶ ※帯域計算の1問のみ

といった形式です。

正誤問題の解法

特に「文章記述のうち、適切なもの・不適切なもの(の組み合わせ)を選ぶ」は、文章が a~d の4つ与えられていて、選択肢は「正しいのは a, c」「b, d」「c, d」「a, c, d」といった感じです。

a~dの正誤全てが明確にわからなくても、たとえば「aは明らかに間違っている」「bは明らかに正しい」という確信さえあれば、その他の c/d に自信がなくても

# 選択肢 判断内容
1 a, c aは明らかに間違っているので、この選択肢は誤答
2 b, d (1,3,4 の消去法により、正答と判断)
3 c, d bは明らかに正しいので、この選択肢は誤答
4 a, c, d aは明らかに間違っているので、この選択肢は誤答

で消去法により、答えは 2 とすることが出来ます。文章のなかには明らかに他と比べて難易度が高く、消去法で正答を絞り込むことを前提に設計されていそうなものもありましたので、前述の通り、広範な知識を押さえて消去法の手がかりとするのが良いと思います。

90分÷80問 で 1問あたりに書けられる時間は1分強 になりますが、語句選択問題はそこまで時間がかからず、他に比べて時間のかかる計算問題もシンプルだったため、一通りの回答を見直す時間も確保可能です。

合格発表は12月5週目(Webポータルでは合否表示)とのことでした。個人的な感触としては、9割程度は得点ができている実感がありますので、特に心配はしていませんが、結果発表を待とうと思います。

出題例

本当はまだ試験から日が浅く、文章や選択肢がそのまま頭に残っているものもありますが、問題漏洩はご法度なので、あくまで参考情報のみ紹介します。

当試験には過去問題集がないため、今後受験される方がレベル感を知るための参考になればと思います(おそらく、テキスト初見では「どこまで細かい内容を学ぶ必要があるんだ?!」と戸惑うと思いますので、その悩み解決の手助けになれば)。

なお、カッコ内の数字は、公式テキスト(第1版) のページ数に対応しています。また、以下はあくまで記憶を頼りにしたもので、内容の確からしさは保証しませんので、自己責任であくまで参考情報としてご覧ください。

  • IoTシステムに「フィールド領域」と「インフラストラクチャ領域」で構成。両領域にIoTアプリケーション/IoTサービスプラットフォーム (p.16)
  • BluetoothZigBee、Wi-SUNは「無線PAN」 (p.26)
  • パブリッシュ・サブスクライブ方式のプロトコル代表例は「MQTT」 (p.44)
  • 微弱無線局/特定小電力無線局/小電力データ通信システム/簡易無線局のうち、技適の要否 (p.53)
  • 「隠れ端末」問題:「送信制御」メカニズムのRTS/CTSで回避 (p.63)
  • 使用帯域(bps) は「データサイズ(byte) × 8 ÷ データ転送(sec)」(p.97)
  • 伝送遅延を少なくするため、データサイズが少量であればまとめて送信 (p.103)
  • GPSによる測位の仕組み (p.120)
  • センサの構成:汎用センサ部の信号前処理で「増幅、感度・オフセット調整」 (p.133)
  • 画像センサ:CCDなどの「撮影素子面」に、フォトダイオードなどの「光電変換素子」が配列 (p.139)
  • プロトコル処理による消費電力の削減=「6LowPAN、CoAP」 (p.138)
  • エナジーハーベスティングバイスの種類=「光・熱・振動・電波」 (p.138)
  • MEMSは「機械構造体」を所有する点で半導体(LSI) と異なる (p.144)
  • 機械学習における過学習での汎用誤差悪化について (p.169)
  • Hadoopについて:MapReduceHDFS (p.171)
  • ストリーミング処理の事例:SNS、POSデータ、株価のリアルタイム分析 (p.174)
  • NoSQLでは速度を優先して、データの「整合性」の保証を緩める (p.176)
  • 深層学習ライブラリ:Caffe、Chainer、TensorFlow (p.184)
  • データフォーマット:CSVXMLJSON (p.204)
  • バイスサイドの主な開発環境:ArduinoRaspberry Pi、mbed、Intel Edison (p.234)
  • 「セーフティ」と「セキュリティ」の範囲 (p.257)
  • 情報セキュリティの要件:機密性、完全性、可用性(p.248)
  • パスワード認証、ICチップ認証、生体認証 それぞれの特徴 (p.257)
  • デジタル署名における「送信者」の「秘密鍵」と「公開鍵」 (p.259)
  • 耐タンパー性、セキュアブート、ファイアウォール、侵入検知システムの説明 (p.262)
  • 組織マネジメント ISMSクラウド向け JIPDECアドオン認証、産業向け CSMS (p.267)
  • 電源供給断が起きた場合の保守・運用上のリスクと対応策 (p.275)
  • 契約形態:サブスクリプションレベニューシェアフリーミアム (p.279)
  • 個人情報保護法の改正では「ビッグデータの有効活用」を狙いとして、新たに「匿名加工技術」に関する規定導入 (p.280)

こうやって書き出してみると、かなりバランスよく出題されていますね。ただし、マニアックな設問は殆どないため、何度も繰り返し書いているように、基礎的な内容をキチンとつぶしていくことが重要だと思います。

試験対策といっても「ただの試験のためのお勉強」にはならず、きちんとIoTの知識形成に役立ったと思います。年末の結果発表で無事合格しており、上級検定が開始されたら、また受験してみたいです。